バラと藤とかすみ草

こじらせるだけこじらせたヲタク女がただ気まぐれに書きなぐるだけ。だいたいR18です。ご連絡はTwitter:@sawa_camelliaへ。

自分と記憶とその隙間

GUNSLINGER GIRLを読み返した。
私は中学生のころ「お兄ちゃん」と呼べるほど親しい人がいて,その人が「ペトラに似ているね」と言っていたことを今でも覚えている。
その影響で,私は高校を卒業してすぐ,髪を赤く染めた。

私は「外付けHDD」「人間DB」と言われる程度の記憶力は持っている。
普通にもっといい人なんていくらでもいるし,こんな人ザラだと思うけど,ここ10年くらいの情報であれば「当時あなたはxxに住んでいて,xx線とxx線を乗り継いでxx時xx分ごろ,xxまで来た,その後xxを回って…」と事細かに説明できる。
友人たちはそれが恐ろしいらしいけど,その反応が面白い!

ただ,「ペトラに似ているね」と言ってもらったのは数少ない中高生時代の記憶。
記憶力がいいはずの自分が,なぜ中高生時代の記憶がこんなに乏しいのか,きちんと理由も分かっている。
"ちょっとした病気"を放っておいた結果がこれである。

抜け落ちた記憶の中には,私自身が忘れていてよかった記憶も,楽しくて仕方なかったような忘れたくない記憶も眠っていることも,分かっている。

果たして中高時代の自分はどんなだったんだろう,と気になって,当時使っていたPCや携帯,誰かが書いた日記を片っ端から漁ったことがある。
そこから得られた情報を総合すれば,中高時代の友人に言わせると私は「最低な人間」で「あの時にやったことはこれから先も絶対に許されるものではない」とかとか,とにかく法に触れない範囲で,できる限りの悪事をしでかしたとんでもない悪女だったということだった。
確かに,私もとんでもないことをしでかした記憶の断片を持っているし,なんとなく手に感触が残っている気がするので,これに間違いはないだろう。

そこで,久しぶりにGUNSLINGER GIRLを読んで,ふと思ったことがある。
義体たちのように,忘れて真新しい記憶を植え付けてもらったら幸せなのかな…というどうしようもない思いつき。
(だからここに書いているんだけど)

私にとっては,おそらくすべて忘れたほうが幸せだし,健康的に過ごせると思う。
私が好きだった子が,いつもか弱い女の子の面倒を見ていたのが数少ない記憶の中にあるせいで,私はいつも,か弱い女の子に対する嫉妬心を隠せない。
ずっとずっと,きっとこの先もそう。
全部忘れちゃえば,「ごめんなさい,覚えていないの」なんてしおらしく言う,憧れの女の子になれる。

ただ,それはとても卑怯だなあとも思ってしまう。
大きい代償はあるけれど,「憧れの女の子」になったうえ,新しい人生を歩めますなんて,いくらなんでも都合が良すぎる。

だったら,全部知りたい。
法に触れない範囲だとはいえ,自分がとんでもない人間だったということを思い出して,
私のようなとんでもない人間が,それなりに幸せに生きている罪悪感に苛まれながら,この先を生きていけばいいと思う。
私がしでかした悪事に巻き込まれた人たちからすれば,こんな程度で許されるはずがないはず。
だったらこのくらい背負って生きてやりたいと思うのだ。

もちろん,この先思い出すことができるかは分からない。
というか,ほぼほぼ不可能だろうと思う。
結局,今のところ私ではなく他の誰かの記憶であることに変わりはないから。

それでも私はその隙間にある記憶を知りたい。
ペトラは本当に強い子だなと思う。
彼女を見ていると,私は誰かのしんどいことやら辛いことやらを代わりに背負えるような人になりたいな,と思うのでした。